院長コラム『Dr.原口のご存じですか?』
皮膚のできもの(皮膚腫瘍)Part3 ほくろと間違われる悪性腫瘍 「悪性黒色腫」
気を付けたほうが良い「ほくろ」があります
「ほくろ」をいじり続けると癌になるという話をきいたことはありませんか?触っているうちに「ほくろ」が癌に変化することはないとされていますので、安心していただいてよいですが、「ほくろ」だと思っていたものが、実は初期の皮膚癌だったということはありえます。例外的に生まれつき巨大(20㎝以上)な色素性母斑は小児期に悪性黒色腫が発生する可能性がありますが、巨大ですので「ほくろ」とは呼ばれないでしょう。(腕全体や背中一面が黒いあざのようになっていることもあります。)初期の皮膚癌を見逃さないようにするためにも気を付けておいたほうが良い「ほくろ」があります。
「ほくろ」と間違われることがある皮膚癌(悪性腫瘍)とは?
「ほくろ」は黒い点状の良性腫瘍である色素性母斑(母斑細胞母斑)を指していることがほとんどですが、見た目が良く似た皮膚癌があります。次のような腫瘍が代表例になります。
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
- 基底細胞癌
- 有棘細胞癌
今回はこの中の「悪性黒色腫」に焦点を当ててみようと思います。
「ほくろの癌」と例えられる悪性黒色腫(メラノーマ)とは?
「悪性黒色腫」は「ほくろ」の代名詞ともいえる色素性母斑と同じく、メラノサイト系皮膚腫瘍に分類される皮膚悪性腫瘍です。この30年世界的に発生頻度が上昇しており、数ある皮膚悪性腫瘍の中でも悪性度が高く、5年生存率が低いため、早期発見・早期治療が求められる疾患になります。
「悪性黒色腫」のセルフチェック
早期発見・早期治療が重要な「悪性黒色腫」ですが、すべての「ほくろ」が悪性黒色腫の疑いがあるわけではありません。日本人では10万人に1人程度の発生率とされています。病院に行く前にできるセルフチェック方法がありますので、確認してみるとよいでしょう。
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丸くない(形がいびつ)
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輪郭がぼやけている
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色がまだら(白色が混ざることもあります)
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6㎜以上の大きさ
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盛り上がっていて、大きくなっていく
いくつか当てはまるものがあるようなら、皮膚科または形成外科の専門医を受診するとよいでしょう。
悪性黒色腫の原因やできやすい場所は?
悪性黒色腫の発生には人種差がある(色が白い人ほどできやすい)ので、紫外線に対する反応が原因の一つと考えられています。その他、紫外線に当たらなくても慢性的な刺激が加わる足の裏にできやすいことが知られています。
悪性黒色腫の種類
- 悪性黒子型(lentigo maligna melanoma:LMM)
高齢者の顔面にできやすいことが知られており、数十年かけてゆっくりと大きくなります。初期は「ほくろ」と見間違えられることが多く、紫外線の関与が考えられています。 - 表在拡大型(superficial spreading melanoma:SMM)
白人に多く出現し、20~30歳代の体幹、下腿にできやすいことが知られていますが、日本でも増えてきています。色白であったり、過去に紫外線を多く浴びたことが危険因子とされています。 - 結節型(nodular melanoma:NM)
平たい時期がほとんどなく、気が付いた時から盛り上がった状態になっています。できやすい場所や年齢はなく、急速に進行するため生命予後が悪いことが知られています。 - 末端黒子型(acral lentiginous melanoma:ALM)
日本人に多い病型とされており、50歳以降の足の裏や爪にできやすいことが知られています(日本人の悪性黒色腫の40%は足の裏にできています)。紫外線の影響よりも慢性的な刺激や外傷が誘因になると考えられています。
悪性黒色腫の診断と治療
悪性黒色腫の確定診断と治療内容を左右する病期(進行度)の決定には病理組織診断が必要になります。悪性黒色腫を疑う場合には見た目の境界部分で取り残さないように切除して検査を行います。病理組織診断で悪性黒色腫と確定診断された場合は、転移についての検査や追加で拡大切除、リンパ節生検および切除範囲によって再建手術を行います。術後に抗がん剤治療を行うこともあります。
悪性黒色腫のまとめ
- 「ほくろ」のように見える皮膚悪性腫瘍の1種
- 悪性度が高く早期発見、早期治療が重要
- 近年発生率が上昇している
- 簡単なセルフチェックが重要
- 診断、治療内容の決定のために疑った段階で切除が必要