1. ホーム
  2. 院長コラム
  3. 皮膚のできもの(皮膚腫瘍)Part2 「ほくろ」

院長コラム『Dr.原口のご存じですか?』

皮膚のできもの(皮膚腫瘍)Part2 「ほくろ」

「ほくろ」に詳しくなりましょう!
 チャームポイントになったり、占いの星になったりと、私たちは「ほくろ」と日常生活のさまざまな場面で向き合うことがあります。気に入っていればよいですが、できた場所や形、大きさに悩むこともあります。「ほくろ」と呼ばれているものは、様々な医学的状態をまとめて指した総称です。まずは「ほくろ」とよばれる状態について知っていただきたいと思います。

「ほくろ」とは?
 「ほくろ」を変換すると「黒子」とでてくるように、「ほくろ」は皮膚表面の茶色から黒色の点を指しています。皮膚表面に黒い点として見えるものの代表例には、次のようなものがあります。

  • 単純黒子

  • 色素性母斑

  • 異型母斑(Clark母斑)

  • スピッツ母斑

  • 青色母斑

 黒い色はメラニンという色素でできており、ここにあげた「ほくろ」はメラニンを作り出すメラノサイトという細胞に似た母斑細胞が増えてできた良性腫瘍です。この中では単純黒子と色素性母斑が多く、母斑細胞が増えている深さに違いがあります。
 単純黒子は表皮基底層という皮膚の表層に母斑細胞が増えた状態で、色素性母斑は表皮よりも深層にある真皮の近くに母斑細胞が増えた状態です。

「ほくろ」の代表格“色素性母斑”
 治療を希望される「ほくろ」のほとんどは色素性母斑です。色素性母斑は母斑細胞が増えている場所によってさらに細かく分類されています。

  • 境界部型色素性母斑
    母斑細胞が表皮と真皮の境界部分に増殖したもの
  • 複合型色素性母斑
    母斑細胞が表皮真皮境界部と真皮内の双方で増殖したもの
  • 真皮内型色素性母斑
    母斑細胞が真皮内のみに増殖したもの



色素性母斑の症状 数や大きさは変化します
 生まれつきあるものもありますが、多くは乳幼児期に出現して、青年期までに大きさや色調、数が変化します。一般には0歳から19歳と年齢が上がるにつれて数が増え、20から39歳の年齢層で数がピークになるとされています。ピーク時に顔面にできている直径2㎜以上の色素性母斑の数は平均67個、多い人で15個という報告があります。

「ほくろ」ができやすい場所
 「ほくろ」は体中にできますが、できやすい場所を調べると多い順に
1)顔面 2)頸部 3)上肢(うで) 4)体幹(胸、腹部、背中) 5)下肢(あし)
と並びます。逆にできにくい場所としては手掌(手のひら)や足底(足のうら)が挙げられます。このことから、「ほくろ」は日光にさらされやすい露出部にできやすいことが推察されます。このことから「ほくろ」ができる原因の一つとして紫外線の影響が考えられていますが、はっきりした発生原因は明らかではありません。

「ほくろ」の治療 ~レーザー治療から外科治療まで~
 「ほくろ」の治療には液体窒素療法などの保存的治療からレーザー治療や手術による外科治療までさまざまな治療方法があり、医療技術の進歩とともに治療方法も進歩しています。特にレーザー治療の分野は進歩が目覚ましく、「ほくろ」を削り取る治療には炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザー、色調を肌色に近づける治療としてQスイッチ付きルビーレーザーやアレキサンドライトレーザー、YAGレーザーなど様々なレーザー治療が行われています。

  • 保存的治療法
    液体窒素療法、ドライアイス療法
  • レーザー治療
    炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)、エルビウムヤグレーザー(Er YAGレーザー)
    Qスイッチ付きルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザー
  • 外科治療(手術)
    電気焼灼(電気メス)、くりぬき切除、切除縫縮(単純縫縮、皮弁・皮膚移植法)

レーザー治療のポイント
 「ほくろ」除去に行うレーザー治療は削り取る治療と色に対する治療に分けられます。削り取るレーザー治療の場合は「ほくろ」そのものを除去できますが、治療部位は浅いやけどのような状態になり、目立ちにくいものではありますが傷あとが残ります。深く削ると傷あとが目立つ可能性はありますが再発率が下がり、浅く削ると傷あとは目立ちにくいですが再発率が上がります。色に対する治療の場合は「ほくろ」の色は肌色になりますが、「ほくろ」を構成している母斑細胞が残ることがあり、肌色の「ほくろ」になるだけのことがあります。特に色を改善する治療の場合は、レーザー治療による刺激が加わった「ほくろ」が将来的に癌化する可能性についてわかっていないことが多く、適応を慎重に見定めて注意深く経過観察を行う必要があります。

《黒子を削り取るレーザー治療》

  CO2レーザー Er YAGレーザー
波長 10,600nm 2,940nm
作用 水分に反応して組織を蒸散する
特徴 炭化層ができやすい 炭化層ができにくい
処置 治癒するまで軟膏治療
再発 深く削ると再発が少ないが、傷あとが凹むなど目立つ恐れ
浅く削ると再発率が高くなるが、傷あとは目立ちにくい
合併症 色素沈着を起こす可能性(CO2よりもEr YAGレーザーの方が少ない)


《色調を改善させるレーザー治療》

  ルビーレーザー アレキサンドライトレーザー YAGレーザー
波長 694nm 755nm 532nm、1064nm
作用 メラニンに吸収させ、メラニン色素を含む部分を熱で破壊
特徴 黒い色調を改善するが、腫瘍自体は残ることがある
レーザー光が届かないほどの厚みや深部病変がある場合には治療適応がない
処置 焦げ茶色のかさぶたが自然に脱落するまで軟膏などで処置を行う
かさぶたが脱落した後は、紫外線やこするなどの刺激を避ける
再発 色調の改善のみで腫瘍自体が残っている場合、元の色に戻ることがあり、将来的に悪性腫瘍となる可能性が否定できない
合併症 色素沈着を起こす可能性

外科治療(手術)のポイント
 手術を行ったほうが良い「ほくろ」があります。厚みがあり、真皮まで達している可能性が強い場合や、悪性腫瘍の可能性がある場合です。形成外科の縫合技術で手術を行うと、最終的な傷あとは1本の白い線となります。目立つものではないため、レーザー治療よりもきれいに治ることも多くあります

手術で切除したほうがよい「ほくろ」

  • 盛り上がっている(厚みがある)
  • 深部まで病変があると見込まれる

悪性腫瘍の可能性がある「ほくろ」

  • 大きさ6㎜以上
  • 形がいびつ
  • 色調がまだら
  • 境界が不明瞭
  • 隆起している
  • ケガなどの誘因がないのに血がにじむ、かさぶたができる



「ほくろ」のまとめ

  • 「ほくろ」にはいくつかの種類があり、そのほとんどは色素性母斑である
  • 色素性母斑は生まれつきのこともあれば、年齢とともに増え、大きくなることがある
  • 色素性母斑の治療はレーザーあるいは切除が一般的に行われている
  • 切除のほうが結果はきれいで、確定診断ができ、再発を気にせずにすむことが多い
  • 色素性母斑と判断が難しい皮膚悪性腫瘍がある

次のコラムへ

前のコラムへ

院長コラム一覧へもどる

Get Started

形成外科・皮膚科
美容外科・美容皮膚科

原口クリニック

福岡市博多区博多駅東1-12-5
博多大島ビル3F

<ご予約・お問い合わせ>

092-474-3001

ページの先頭へ